振り込め詐欺と確定申告
警察庁の発表によりますと、
今年1~7月の振り込め詐欺などの被害総額が300億円を超えたといいます。
過去最悪だった平成25年は、1年間で約490億円の被害総額だったそうですが、
今年はその昨年を大幅に上回るペースのようです。
実際、実家の祖母にオレオレ詐欺の電話が来たこともあり、身近であることを実感致しました。
もし振り込め詐欺に騙されてしまった場合、
税務上何か特別な措置を受けることができるでしょうか?
当ブログ、2014年10月17日付「台風被害に遭われたら」http://minato-tax.com/3260で触れた
「雑損控除」の適用を受けることができるかどうかが問題となります。
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雑損控除とは、災害・盗難・横領にあった際、
その被害額相当を、儲けから引くことができる制度です。
災害等の被害にあわれた方は、担税力が小さくなってしまうので、
所得税を安くしてあげましょうというのが、雑損控除の趣旨です。
こうした、趣旨から考えると、
振り込め詐欺での被害額も、雑損控除を適用できるようにも思えます。
しかし、残念ながら、今のところ振り込め詐欺被害は雑損控除の対象外です。
騙されてお金を取られたのに、税金も安くしてもらえないとは
「泣きっ面に蜂」状態ですが、こちらに関しては、裁決で一定の結論が出てしまっております。
(裁決とは、税務署の処分に納得がいかないときの不服申立に対して
国税不服審判所という機関から出される判決のようなものです。)
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本件裁決では、要約次のように述べ、
振り込め詐欺の雑損控除適用を認めませんでした。
1、犯人が指定した口座に3回にわたり振込みをしたこと自体が、
被害者の意思に基づいてなされているから、「災害」には当たらない
2、振込み自体は被害者の意思に基づいてなされているから、
「盗難」による損失にもあたらない
3、「横領」とは、他人の物を預かっている人が、
所有者でなければ許されない処分をすることをいうが、
振り込んだ金銭の所有権は犯人側へ移っているといえるため、「横領」による損失にもあたらない
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裁決ではこのように示され、
振り込め詐欺による損失は、災害・盗難・横領のいずれによる損失でないため、
雑損控除の対象とはならないとされました。
被害者には少し厳しい取り扱いのように見えますが、
振り込め詐欺の場合、「振り込む」行為に一度は被害者の意思が関わっているため、
不測の災害損失のための雑損控除とは、土俵が違うと考えられているようです。
なお、クレジットカードをスキミングされたことにより、
不正な現金引き出しや、カード利用をされた際には、雑損控除の対象となります。
これは、そもそもカードの「盗難」に遭ったという事実があって、
カードの盗難=現金の盗難と同視できるからといわれています。
雑損控除にはこういった似たようで取扱いが異なる論点が多いのですが、
次回機会があれば、
耐震偽装工事と雑損控除の適用、
アスベスト除去工事と雑損控除の適用について触れたいと思います。
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(記事・うすくら)
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